SAT 真の患者利益のため予防歯科を中心にした歯科医療へ

SATについて


2020年 新年のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。

                  

皆様方におかれましては新たな決意を胸に秘めて新しい年を迎えられたことと思います。


2020年は東京オリンピックが56年ぶりに開催されます。昨年はラグビーワールドカップが日本で開催され、日本代表チームが「One Team」となり、活躍する姿が印象的でした。今年も明るい話題で盛り上がる一年となることを祈念しております。

また、今年は私が酒田に日吉歯科診療所を開業して41年目を迎える年となります。酒田市は現在、少子高齢化問題や医療・介護問題、人口減少など様々な問題を抱えておりますが、魅力ある地域として今後も精進してまいりたいと思います。


◆メディアからの発信


NHK 「プロフェッショナル仕事の流儀」やテレビ東京「カンブリア宮殿」、「未来世紀ジパング」に日吉歯科診療所を取材していただきました。これらの放送を機に日吉歯科の取り組みを知っていただくことができました。

昨年も様々なメディアから日吉歯科の取り組みについて取材を受け、各誌に日吉歯科の取り組みについて記事を掲載していただきました。

一般の方を対象に予防歯科についてわかりやすくまとめられておりますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。



◆医と産業の連携


① 福利厚生としてのメインテナンス助成

昨年は企業と連携を深め、海外も含めて各地で精力的に講演活動を行いました。これら活動によって企業にも口腔の健康に対する価値が浸透し、福利厚生としてメインテナンスの助成を採用する企業が増えてまいりました。歯科企業ではモリタが昨年より社員に対するメインテナンスの費用助成が開始され、現在も多くの企業が同助成を検討しております。

さらに今年は富士通とオーラルフィジシャン医院が仙台を拠点とした新たな健康促進プロジェクトを行う予定となっております。このプロジェクトではより多くの社員が予防歯科を受診できるように歯科健診とオーラルフィジシャン医院を繋ぐ新たな試みとなっております。


② 企業との共同研究

口腔フローラや腸内フローラなど身体に住み着いている常在菌が人々の健康に大きく影響していることが様々な研究によって明らかにされてきました。日吉歯科では一昨年からライオンやメタジェンと共同でこの口腔フローラと腸内フローラの関係に関する研究を行ってまいりました。この研究によって今後新たなう蝕・歯周病に関与する細菌の発見や口腔内環境が身体に与える影響について明らかになると考えております。

その第1段が国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。現在も引き続き研究が行われており、今後さらに新たな知見をご報告できると思います


口腔細菌叢の簡便な採取方法を新たに開発(株式会社メタジェン)


また、日吉歯科では湖池屋が発売しているプロバイオティクス商品「LS1」を用いた臨床試験が昨年行われ、こちらも現在論文作成中となっております。これらの研究はまもなく皆様へご報告できる予定となっておりますので、ご期待いただければと思います。


③新たな歯科保険制度

昨年より東京海上日動と連携してオーラルフィジシャン医院を対象とした新たな歯科保険制度を作ってまいりました。こちらを今年から開始いたします。この歯科保険制度を通じて歯科医院はより患者のメインテナンスへの定着・普及につながり、患者は万が一治療が必要になった際にも安心して質の高い治療を受けることによって、MTMに取り組む歯科医院の増加・定着に寄与できると考えております。今後、本制度について説明会を開催する予定となっております。

詳細が決定次第、SATホームページヘ掲載いたしますので、ぜひご参加ください。






④ 唾液によるがんリスク検査

慶應義塾大学研究所のベンチャー企業である株式会社サリバテックが提供しているサリバチェッカーを日吉歯科診療所でもサービスの提供を開始しました。こちらは唾液の成分から肺がん、膵がん、大腸がん、乳がん、口腔がんなど複数のがんのリスクが評価できるようになっています。少量の唾液のみを採取するだけであるため、身体への負担が少なく、自覚症状が出にくい膵がんなども早期発見できる可能性があります。歯科医院は口腔に限らず、全身の健康に対してアプローチをする必要が増していますが、そのひとつとして活用できると考えています。


株式会社サリバテック


◆オーラルフィジシャンセミナー関連


① オーラルフィジシャン育成セミナー(OPセミナー)

OPセミナーは時代のニーズに合わせバージョンアップを重ねてまいりました。今年はメディカルトリートメントモデルの実践に加えて自費メインテナンス、クラウドサービスの実践を中心とした内容となっております。

今年は66〜69期を開催予定ですが、現在は66期までが満席となり、67期が募集中となっております。参加ご希望の方はお早めにお申し込みいただければと思います。


オーラルフィジシャン育成セミナー2020年バージョン


② 若い歯科医師のためのOP育成セミナー(PreOP)

若い歯科医師・歯科衛生士・学生を対象としたPreOPセミナーの酒田での開催は昨年で終了いたしました。今後は東京と福岡を拠点として、研修のあり方を変え、引き続きセミナーを開催する予定としています。


若い歯科医師のためのPreOPセミナー

関東地区OP勉強会

Post Oral Physician Seminar


③ トマス・モディア先生日本講演 「全身疾患と口腔保健の関係・小児歯科における齲蝕と歯周病」

トマス・モディア(Thomas Modéer)先生はスウェーデンのストックホルムにある医科大学「カロリンスカ研究所」(Karolinska Institutet):歯学部世界ランキング1位の小児歯科名誉教授です。

小児歯科の世界的権威であり、2019年4月に著書「スウェーデンのすべての歯科医師・歯科衛生士が学ぶ『最新 小児歯科』」の日本語訳が株式会社オーラルケアより発刊されました。この書籍は、ダン・エリクソン先生らの「トータルカリオロジー」、ビョルン・クリンゲ先生らの「トータルペリオドントロジー」に続く必読書です。また、「全身疾患と口腔疾患の関わり」についても多くの論文を出版されています。

本講演では「トータルカリオロジー」「トータルペリオドントロジー」「最新 小児歯科」のすべての翻訳を行った西真紀子先生がコーディネーター・通訳をつとめ、より深く・広く・わかりやすい内容となっております。

予防歯科は早く始めるほど効果が上がります。この意味で小児歯科についての最新の知識はすべての歯科関係者にとって必要な知識です。この講演は、世界最高峰の歯学部で教えられていることを学べる、またとない機会です。


トマス・モディア先生日本講演


④ オーラルフィジシャン・チームミーティング

2006年から開催してきましたオーラルフィジシャンチームミーティングは、今年で酒田での最後の開催となります。今年は「歯科医療の未来」を大きなテーマとして、アメリカ、スウェーデンで著名な先生方を交えて講演いたします。



ダン・エリクソン講演「予防歯科の未来」

予防歯科先進国スウェーデンにおいて第一線で活躍されているマルメ大学歯学部カリオロジー科のダン・エリクソン先生にご登壇いただきます。

ダン・エリクソン先生にはスウェーデンがむし歯の洪水時代から現在の予防歯科が浸透した社会になるまでの取り組みについて、さらには予防歯科が普及したことによってスウェーデンが今後どのような未来を迎えようとしているのかについてご講演いただきます。


[登壇者]ダン・エリクソン

・マルメ大学歯学部カリオロジー科教授

・スウェーデンう蝕治療ガイドライン議長



マイケル・レッディー講演「歯科医療の未来」

スウェーデンと並び歯科医療の先進国であるアメリカにおいて毎年全米大学ランキングTOP10入りをしているカリフォルニア大学サンフランシスコ校で歯学部長をなされているマイケル・レッディー先生にご登壇いただきます。

マイケル・レッディー先生にはアメリカにおける歯科医療の現状とIT,AIの発達によって今後の歯科医療にどのような変化が起きるのかについてご講演いただきます。


[登壇者]マイケル・レッディー

・UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)歯周病科教授

・同校歯学部長



熊谷 崇講演「チームミーティングを振り返って」

チームミーティングは2006年に開始し、2020年を含めて計15回開催されてきました。

本セミナーを立ち上げてから現在に至るまでを振り返りながら、今後の日本の歯科医療について、主宰である日吉歯科診療所の熊谷崇より講演いたします。


[登壇者]熊谷 崇

・日吉歯科診療所理事長



オーラルフィジシャン・チームミーティング2020 [SAKATA FINAL]


◆おわりに


最後になりますが、昨年のチームミーティングでご講演いただいた江崎禎英さんの記事(日経新聞)をご紹介したいと思います。

生涯現役社会の構築
高齢化の進展と疾病の性質変化を踏まえて


 一般に、高齢社会は「暗い社会」だと思われていますが、それは大きな間違いです。ヒトの生物学的な寿命は約120年あるのです。60歳を祝う「還暦」とは、暦が一周したという意味です。暦が二周する120歳は「大還暦」と呼ばれます。問題は高齢化それ自体ではなく、「人生100年時代」をどう生きれば良いかが分からない、二周目の人生における「しあわせの形」が無いことなのです。
 日本の医療は、誰もが少ない負担で最先端の医療が受け入れられる世界一の制度です。しかしそれが当たり前になりすぎて、健康管理は後回しになりがちです。かつて医療とは感染症との闘いでした。しかし、素晴らしい薬の開発によって感染症を克服しつつある現代人は、食べ過ぎと運動不足とストレスによって新たな病気を自ら作り出しているのです。生活習慣病や老化は、本来「予防」ができるのです。頑張らなくても健康を維持できるサービスの充実や、より早いタイミングでの対応によって患者のQOLは向上します。
 現在の介護制度は「お年寄りは弱いもの、支えられるべきもの」という前提で作られているため、高齢者は家にいても何もせず、施設に入れば何もさせてもらえません。本来は、最後まで自分のことは自分で決める「自律」した生活を目指すべきであり、それをサポートするのが、介護の役割です。
 大切なのは、80歳になっても100歳になっても「今がいちばん楽しい」と言える生活を送ることです。幸せを感じるための最も簡単で確実な方法は、誰かに「ありがとう」と言ってもらうこと。最後まで自由と役割を持ち続けれられる生涯現役社会こそ、「いのち輝く未来社会」の姿なのです。


江崎 禎英
経済産業省 商務・サービスグループ制作統括調整官
厚生労働省 医政局 統括調整官
内閣官房 健康・医療戦略室 次長


これまでも日吉歯科診療所は、多くの企業・歯科医院にサポートしていただきながら歩んで参りました。今後も「KEEP28」を究極の目標とし、患者さんの健康に寄与できる診療所作りに邁進していく所存です。


今年も皆様のご活躍とご健康を心よりお祈りいたしております。


日吉歯科診療所 熊谷崇